25.12.05

神さまを祀ってみるプロジェクト2


神棚を有効に活用しているという満足感であろう、寝床についても寒さに打ち震える、ということが少なくなった。その効果は、一枚多く着こんだという物理的条件によるものだけではないはずだ。
そのおかげだろうか、先日、寒い小説とわたしが嘆いた鹿島田真希「ナンバーワン・コンストラクション」も、その寒さの原因がはっきりとわかれば、ぬくい心で読む進めることができた。
この小説の寒さの要因は、まず、登場人物が素朴で善良な人ばかりである、ということに尽きよう。おかげで、彼らのセリフが信じられないくらいに「寒い」。
また、語りの視点が一番上にあるから、登場人物の心情が読者に情報として極めて平等に与えられる。つまり、ウラがない平面的な感じ。あらゆるものに、平均して光があてられていて、陰影がとぼしい。蛍光灯の光のように、照度的には明るいのかもしれないが、温かみがない。
善良な人たちが織りなす、ウラがほとんどない世界(それはとてもシュールな世界にわたしはには思えた)が、その「冷たい」世界が、小説の構造を支えるテーマである「建築」と対応している、ということなのだろう。
小説のハナシはもういい。
向上心に突き動かされたわたしは、神棚をパワーアップさせることにした。
何か、暖かくなるような供え物を。
黄色い神体に合わせ、黄色いものをわたしは見つけた。

モンテディオ山形のアウェイ・ユニホームである。
しかも、胸スポンサーは「はえぬき」ときた。ブランド米である。
すばらしい。これを供物として捧げれば、豊饒が約束されるようなものだ。

戦後の農家の課題は、「あまりたくさん作らないようにする」ということだった。
たくさん作物が取れすぎると、値段が下がる。高値で売れないから、もうからない。
取れたものを市場に出さずに処分する、なんてこともあるように。

モンテディオ山形というチームも、このような構図と無縁とはいえぬ。
たとえば、順調に勝ち星を挙げると、チームはJ1に昇格してしまう。
J1に行きゃ運営費がぐーんと上がる。よって、運営会社(山形の場合、社団法人)は必死に頭下げてスポンサーを集めなければならなくなる。しかし、そんなバイタリティはもともとないし、手間はなるべく省きたい。赤字もなく、このままJ2で中位を保っていたほうが、自分たちが運営しやすいってわけだ。
だから、主力選手には慰留を求めずに放出し、必要なポジションの補強はあまりしないようにし向ける。つまり、勝ち星はほどほどに、というわけだ。
こんなことは噂にすぎないが、それが事実であってもおかしくないのが現在の山形ちゅうわけ。前監督もそんなフロントに愛想を尽かして出て行ったようだし。

つまり、あまり豊饒であっても、いけない。
ほどほどの豊饒を。腹八分目。別腹なんてありません。
この神棚の上にあるものは、そんな悲しい現実をも伝えてくれる。んがあぁ。