15.8.06

コーカサスは腹に来る。

先週土曜日。アテネ・フランセでアルメニア映画祭をやっている。パラジャーノフの「ざくろの色」をスクリーンで見たいなと思いつつも、家のなかでグズグスしてたら、雨がざばざばと降ってきよったので、ほうほうと雨見物。

結局、その日は最終上演のハルチュン・ハチャトゥリアン監督の「約束の地への帰還」だけを見る。災害や紛争によって、新しい土地への移住を余儀なくされた家族をドキュメンタリーっぽく描いた作品。セリフもなく、淡々と描き切るっていう、わたくし好みのまったりテイストだったにも関らず、直前に大メシ食らったせいか、眠気に誘われる。まったり系を極めるには、厳格なる体調管理が必要だと改めて痛感。

家に帰ってきて、本日見逃した「ざくろの色」が無性に見たくなり、ビデオを引っ張り出して、鑑賞。この映画、もう10回以上は見直しているけど、見るたびにドキドキしちまう。モダニズムと民族色の際どい融合。一つ一つのシーンがやったらと濃い。

翌日は、ふらふらと三百人劇場のソヴィエト映画祭へ。この日は、パラジャーノフの「火の馬」が上演される。十五年くらい前に見たときにゃ、ほかのパラジャーノフ作品のインパクトの強さにあてられて、ストーリーさえ覚えていなかったのだけど、やはりこの作品もかなり濃厚路線。こちらは、モダニズムと情感の際どい融合といった感じか。

そのあと、ノリでゲオルギー・シェンゲラーヤの「ピロスマ二」と「若き作曲家の旅」を続けて見る。このグルジア人監督の作品を見るのは初めてなのだが、ストーリーはシンプルながら個々のシーンの構成がむんむんと香しい。なによりも、トビリシの裏路地や荒れ果てた屋敷が、魅力的に描かれているのに心を奪われた。

結局、二日間でアルメニアとグルジア関連の映画を6本見た。
帰宅して、腹痛にあえぐ。帰り際に食った千石自慢ラーメンのスープを全部たいらげてしまったのが良くなかったか。前は全然平気だったのに、自分は胃だけは丈夫だったはずなのに、年を取りすぎてしまったのか。ぐすん。いやいや、これはアルメニアとかグルジアの映画を見まくったことも一つの原因なのかもしれん。一つひとつのシーンが濃いんだもん。以前、アルメニアを訪れたとき、ピアニストのK氏が地元の名物料理をさんざ食べたおかげで、ひどい下痢に悩まされてたのをふと思い出した(氏はそういう状態で、チェクナボリアンの協奏曲を見事に弾き切った。終演後トイレに籠もっていたが)。コーカサスは腹にガツンと来る。

2時間ばかりぐったりしてたが、おもむろにアイス食いたい欲望がむらむらと沸いてきて、黒糖モナカなる商品をバリバリと食ったら、腹痛は完治。甘いモノは美しい。