6.10.09

舐めるように読んでしまった記事

なんでこんなものが報道されるの? という不思議な記事に出会うことが最近になって目立ってきているように思う。芸能人の薬物騒動なんて、スポーツ新聞とかワイドショーだけでやるぐらいの小ネタに過ぎねえのにさ。まあ、明治時代の小新聞だって、そういうバカバカしいノリだったから、それを忠実に受け継いでいるといえば、そうなのかもしれない。もともとジャーナリズム不在の国だしねえ。

そのなかでも、「これはすごいんじゃなかろうか」と思ったのは先月に報道された、コレ。

読んだら売るつもり…「坂の上の雲」など文庫4冊万引き

文庫本を四冊万引きするだけで、こんなふうに報道されるなんて、新鮮すぎる。日刊万引き新聞とかじゃなくて、全国紙の産経新聞ですよ。しかも、この報道、最初は容疑者が実名で記されていた(たった今、リンク先を確認したら、実名が忽然と消えていた)。実名で報道する意味の無さに、後から気付いたのでしょうな。そりゃそうだろ。

で、このニュースのどこらへんにニュース・バリューがあるのか。一通り読んでも、いつもながらの、つまんない日常がそこにあるだけ。これが報道の対象になるのだったら、すごいことになるざますわよ。警察に捕まった万引きの総数が年間約十万件くらいだから、朝刊開くと約三百件の万引き記事が並ぶわけ。壮観すぎねえか。

ただ、一つひっかかるのは、司馬遼太郎の「坂の上の雲」ですかね。なぜ、わざわざ盗んだ本の書名がこのように見出しにまでなるのか。ははん。要するに、産経新聞は、「坂の上の雲は、万引きして読むほど面白い!」、これだけを言いたかったのではないだろうか。このメッセージを伝えるための報道というわけだ(この事件、他紙は一切報道無し)。そういえば、「坂の上の雲」の単行本は文藝春秋だけど、連載は産経新聞だった。社会面で堂々タイアップ記事というわけですか。さすが、野蛮な国で出ている新聞は、ちょっと違うぜ。