18.6.06

決してクロアチアの姉ちゃんのためではなく。


四年前のワールドカップの期間中は、スカパーですべての試合を生中継してくれていたから、地上波を見ずに済んだ。たまたま付けたNHKで、堀尾アナがバカなことを言っていたので、これを見続けるのはツラいなと思った。

今回スカパーはすべて翌日の録画放送なので、リアルタイムで見るには地上波を見る必要が出てきた。これがまた、ひどいんですね。四年前のワールドカップ期間中、トルシエ監督が日本代表にスカパー以外のテレビを見ることを禁じたことを思い出しちまう。

すべてを陳腐な物語に変換するのは仕方ないにしても、有名人やサッカー関係者がテキトーな戦術を語ったりする。ほぼ2ちゃんねる状態。これはトルシエじゃなくても、禁止したくなるわけだ。そんなアホの戯言を耳に入れても、まったく影響されないのが理想なのだが、それだけ成熟していない社会なのが実状なのだ(ネット掲示板の書き込み一つで警察が動く国だし)。ちなみに、そんなトルシエも今年は地上波で活躍中だったりするのが、またおかしいのではあるけれども。

試合の実況や解説も、ふだん海外のリーグ戦などチェックしていない連中ばかりだから、選手の名前一つ発音するのに愛情がまるでない。しかも、これまでのイメージの範疇だけで語ろうとする。この業界も志鳥栄八郎先生ばかりなのか。そろそろ「ゲルマン魂」とか「無敵艦隊」とか言葉を使ったら、罰金ものにすべきじゃあないか。

毎度のようにヨーロッパ、ヨーロッパと言うのはいいかげんバカっぽくてイヤなのだが、サッカーに関しては、さすがに向こうのテレビは違う。ドイツのZDFでは、試合が終わって30分後にキーパーから見える位置を3Gで再現していたり、かなりマニアックな内容だった。イタリアでは、国内リーグ戦終了後のゴールデンタイムに、試合内容について討論し、そこに当事者の監督や選手などが電話で参加するなどという番組を日常的にやっていた。日本では考えられるか? 土曜日のゴールデンタイムに、「Jリーグ・アワー」なんて放送できる環境ではないだろ。

もちろん、RTLなどの軽い番組では、ワールドカップでの売春婦の活躍や風俗店の健闘を紹介したり、外国人サポーターにドイツ国歌を歌わせたり、ブラジル人サポをいじりたおすアホ企画などもてんこ盛りなのだが、これはこれでコントラストがはっきりしてていい。要は、試合内容と、その他のものを分けて考えてくれということだ。

だいたいサッカーなんて、みんなそんなに興味あったんかいな。「負けられない一戦がある」なんて陳腐に煽られると、「じゃあ、負けてしまえ」などとわたしは思う性格なので、今日は堂々とクロアチアを応援することにする。前回の試合を見て、ジーコどころか川渕体制ではまるでダメだということがハッキリしたので。どーんと行け行け、ニコ・コバチ。憎々しげにヘッドで決めろプルショ。でも、小笠原には活躍して欲しいかな。

などと言いつつも、「日露戦争とか大東亜戦争の前夜は、メディアも世論もこんなふうに騒いでいたんだろうなあ」ということを擬似体験するには、ワールドカップは最適なのである。なにしろ戦死も爆撃もなく、その気分だけ味わえるのだから。ならば、永井荷風のように一切を黙殺する手もあるかもしれないが、小人物のわたくしにはそれができないだけなのである。

(写真はウィーンの街角で、試合後負けたのにも関らず、奇声を挙げていたセルビア・モンテネグロのサポーター)