国内のニュースでも報道されているようだけど、今月6日にベルリン・フィルの「デジタル・コンサート・ホール」のライヴ放送が始まった。フィルハーモニーで行われるすべてのベルリン・フィルを演奏をライヴでネット中継するという試みである。
昨年10月末にベルリンを訪れ、担当のマニンガー氏から説明を受けたときは、「まだいつから始まるか決まってない」「最初はラトルが指揮する演奏会から始めたい」とうかがっていただけに、こんなに早く開始されるとは驚きだった。この時期ラトルのコンサートは予定にはなかったので、このネット中継のお披露目ために、急遽コンサートを企画したようだ。気合い入ってんなあ。
最近はオーケストラが自前のレーベルを作って、CDをリリースすることが流行っている。コンセルトヘボウやロンドン交響楽団みたいに。こういうことをベルリン・フィルもやってみようかの、というのが事の発端らしい。ところが、さすが新しもの好きのベルリンというべきか、パッケージ・ソフトなんて古いぜ、これからストリーミング配信に決まってんだろ、というわけで、こういう映像ライヴ配信という形へ。ベルリン・フィルからすれば、我々がメディアに買われるのではなく、自分たちがメディアになり、この分野を促進するのだぞお、といった意気込みらしい。
それでも、今さらストリーミング配信と言われてもねえ、なんてIT小僧に言われないように、かなり手の込んだものになっている。リモコン操作のカメラ五台を駆使、映像もHD画質、そして視聴料だって結構エグゼクティヴ。こうした配信では、ときたま蚊帳の外みたいになるMacintoshにも対応しているのが喜ばしい(ベルリン・フィルの映像制作者や配信担当者もMac使いだったのを先に確認しておいたから、これは心配いらず)。
宣伝文句の通り、画質は問題ない。ポディウムの客の細かな表情もバッチリだ。なお、演奏前には客席などを舐めるように映すこともあるので、誰も見てないだろうと思って、過度にいちゃついたりするのは控えたほうがいいかもしれない。
ただ、ライヴのときは回線が集中するのか、音と絵が同時に途切れることもある。画質は三段階選べるので、ライヴは低画質、後日同じものがアルヒーフに収録されてからは高画質を選択するのが良策かもしれん(うちの機械と回線スペックだと)。音が途切れるのはかなりのストレスだし。さらに、アルヒーフよりもライヴのほうが、弱冠画質が落ちる気がしてしまうのは帯域制限などをやっているせい?
音質は、PCのヘッドフォン出力からヘッドフォン・アンプに通してゼンハイザー、というやり方をしているのだが、格別問題に感じるようなことはなかった。これより悪いCD録音なんてザラにあるしねえ。こちらとしては、画質を多少落としてもSACD並みの吃驚するような音質で提供してもらいたいもんだけど。
さて、今シーズンのベルリン・フィルのプログラムだが、今年はベルント・アロイス・ツィンマーマンがテーマ作曲家なのか、彼の作品が毎月演奏される。ラトルが1楽章の交響曲、ホリガーとツェートマイアーによるヴァイオリン協奏曲、オラモの《フォトプトシス》など。目玉は、4月のエトヴェシュが指揮する《若き詩人のためのレクイエム》か。このコラージュ作品を映像で見られるとは僥倖だぜ。ブーレーズとエマールのラヴェルのコンチェルトも楽しみ(グラモフォンがディスク出しそう)。
ちょうど現在、日曜のコンサートの中継の休憩時間。相変わらず、メータはアホみたいに元気が良いなあ(それ以外に感想がないところが、また天晴れなことである)。モーツァルトの協奏曲を弾いたペライアは以前よりちょっと荒れてる?