昨日はマウリツィオ・カーゲル生誕75周年の記念日だったのでありました。
んでもって、こういう日こそ、記念演奏会があったのではと思って、コンサート情報をチェックしたがまったくござらん。第9とメサイアとクリスマス・コンサートばっかし。お客をなめんなよ。ま、あったらあったで、行けなかったことを深く後悔しちゃいそうなのでいいや。
そういえば、カーゲルには、自分の誕生日にまつわる《1931年12月24日》(...den 24.xii.1931 )という曲があったわな。バリトンと室内アンサンブルのための作品で、この日付の新聞に載っている事件や広告が歌詞として歌われてる。
その内容は、ブエノスアイレスでのクーデターとか、関東軍の欽州攻撃の際の司令官本庄繁のコメント、ローマの図書館で屋根が落ちてきて5人死んだという記事、煙草「パロール」の宣伝文句など。
ファシズムに進んでいく世界情勢が反映され、いつもの猥雑サウンドに失笑しつつも、ドンヨリ不安になる作品なんである。ただし、最後にアホのように打ち鳴らされるクリスマスを告げる鐘がこれまでの暗さを吹き飛ばすように、癒してくれるのがたまらんのですわ。一頃は、チャリンコに乗りながら、「パロール」の部分を歌ってたなあ(愛国者はパロールしか吸わない。6ペニヒ。マイルドでアロマティッシュ!)。
図書館で屋根が落ちてくる部分では、消防用サイレンがけたたましく鳴らされる。こういうサウンドが用いられるということは、ちょうどこの年に作曲されたヴァレーズの《イオニザシオン》と関連があるのかしらん。
こういう曲は、知らぬ顔してクリスマス・コンサートと銘打ったイベントで堂々とやればいいのである。ちゃあんとクリスマス関係の作品なんだから問題ない。日本にはうってつけのバリトン歌手松平敬氏もいるし。コンサートのアンコールは、シュニトケの《清しこの夜》で、オレ狂喜。