30.6.06

なにゆえプートガァーがあたくしをドキドキさせるのか。

代表の国際試合といえば、ポルトガル代表がどういう出来なのか、今回はどこまで勝ち上がってくれるのか、そして、どのような悲しい負け方をするのだろうか、そんなことが気になって仕方がないのである。

これまでのポルトガルの試合は、華麗でロマンティックだったのだが、試合ではなかなか勝ち進めない、そういうリアリズムに欠けているといわれた。

しかし、今年のワールドカップに出場しているポルトガルはちと違うのである。妙に手堅い。まず信じられないことに、守備が堅い。中盤の組織力も攻撃のためだけではなく、実にいいカバーリングを見せてくれる。そんでもって、ストライカーのパウレタは地味なことこの上ないが、リアリズムに徹して無言でゴールを決めてくれる。せいぜい、クリスティアーノ・ロナウドが、試合と関係なく遊び心たっぷりのボールタッチを見せてくれることが、いかにもなポルトガルらしさを残しているものの。しかし、こんなのポルトガルじゃないやい、と思う人もいるだろう。

しかし、わたしはこの現実主義に傾きつつあるポルトガルにドキドキしてしまうのだ。たとえば、「オレはロッカーになるんだ」と言い張っていた息子が、「やっぱ、オレ、オヤジの仕事を継ぐよ」としおらしい顔で言ってきた朝。今、まさにわたしはそういう気分なのである。子供なんていない自分が言うのも説得力に欠けようが。

ポルトガルとオランダの試合はすさまじかった。どんどん人がいなくなる。不利っぽい判定も続く。こういうパターンは、必ずやポルトガルは負ける。いつかどこかで見た風景なんだよね。ユーロ2000のフランス戦、117分(時間までちゃんと覚えている)よくわからないハンド判定でPKを決められ、延長ゴールデン・ゴール負け。ワールドカップ2002、勝たなければ敗退の韓国戦では、またもや退場者続出で自滅。ユーロ2004の決勝戦、もう負けないだろうと思われたギリシアに力負け。ポルトガルの敗退するところには、すがすがしくない、異様といっていいほどの悲しさが漂う。そういう悲劇が良く似合うチームだといっていい。

ちなみに、ポルトガル代表に退場者が少なくないのは、判定に恵まれないという理由だけではない。彼ら、実際にラフなプレーが多いのである。ポルトガル・リーグを見ればわかるのだが、けっこう激しくバシバシ削っり合ってる。一般的にはポルトガル=ビューティフルという構図がまかり通っているものの、それと同時にけっこう荒っぽいのである(だから、ポルトガル・リーグは意外につまらなかったりする)。

というわけで、今回のオランダ戦でも退場者が出たとき、そしてオランダがイケイケになって攻めてきたとき、またもやポルトガルの悲しみを伴う敗退がチラついたのはいうまでもない(これは多くのポルトガル・サポーターも感じたに違いない)。ところが、今年のポルトガルは一点を守り抜いて、勝ってしまった。すげえ。親父号泣。さすがおいらの息子だっぺよ。

そんな試合を見てしまったら、次のイングランド戦、けっこうイケるんじゃないの、という気もしてくる。デコとコスティーニャが出場停止。ロナウドもケガっぽい。それでも、こんなリアリズムをもって試合をしているポルトガルが、連繋ゼロのイングランドに負ける気がしないのである。と、ここまで期待させつつ、ありゃまあ、コロっと負けてしまい、あわれな姿をさらすのも、またポルトガルらしいといえば、そうなんだけど。